Q77.【照れ】とは何か?

A.【照れ】とは喜びの回避形

 照れは、喜びから状況による分岐をした感情です。
 喜ばしい場面でも、率直に喜ばず照れを示す人がいます。
 他人の称賛を受けたときなどに、こんなに褒めないで、というとき。あるいは、喜び過ぎた直後や、うれしいことがあり、それを指摘されたときなどに照れくさく感じます。照れは、称賛が過剰であるとの認識によって生じるといえます。
 こうした照れは経験的に発達します。何か喜んだ後の失敗、はしゃぎ過ぎや調子に乗り過ぎての失敗があると、その経験が照れを作り出すのです。喜びの中に警戒が生まれ、興奮を押さえようとするのです。
 そのため赤面の表情となりますが、恥と異なり笑顔です。喜びとそれを押さえようすることによる葛藤の表情が赤面です。
 照れの行動は多様です。隠れたり、逃げたりします。よくしゃべってごまかしたり、相手の体をたたいたりなど、軽い攻撃を示すこともあります。
 照れは、自己が傲慢でないことをアピールしています。他人の反感を押さえる効果があるのです。まったく平然と他人の称賛を受けると、格好いいが親しみにくいと思われてしまいますので、それを避けているわけです。
 男性は、恥じらい──照れをうまく出せる女性を好む傾向があります。これは恥じらいを年齢の指標として用いることと、相手の上に立とうとする傾向のためと考えられます。
 照れの行動には、「以後、これを当然のこととして考えないでほしい」という意味があるのです。能力を越える、過剰な期待と責任を与えられることを回避するのです。照れの行動の後は、他人の頼みごとを拒否しやすくなります。これにより、後の行動の失敗を減らすことができます。
 照れは好感を与えることも多いのですが、威厳を損ない評価を下げてしまう効果もあります。それを防ぎつつ、信頼を得る方法に謙遜があります。
 謙遜とは、照れの作用を意識的に行うことです。照れはあまりにも子供っぽい反応であるためです。照れの反応のほとんとが身体的なものなのに対し、謙遜はその言語的内容で表現されます。照れの反応を意識された言語に置き換えることで、照れを自己の能力に取り込んで成熟していることを示すのです。