脳の回路図

脳の回路図


                       ┌──────感覚連合野───────┐     
                       │    ┌────側頭連合野───┐│
       ┏━━━━┓ ┏━━━━━━┓ │┏━━━━━┓          ││     
    ┌─→┃ 目  ┃→┃ 視覚野  ┃─→┃視覚連合野┃          ││     
    │  ┣━━━━┫│┣━━━━━━┫ │┗━━━━━┛ ┏━━━━━━━┓││───┐ 
    ├─→┃ 耳  ┃→┃ 聴覚野  ┃─────────→┃聴覚連合野  ┃││──┐│ 
環境情報┤  ┣━━━━┫│┣━━━━━━┫ │    └──┐┃ウェルニッケ野┃││  ↓↓ 
 ↑  ├─→┃皮膚・舌┃→┃体性感覚野 ┃┐│┏━━━━━┓│┃       ┃││←┏━━━┓
 │  │  ┣━━━━┫│┣━━━━━━┫└→┃頭頂連合野┃│┗━━━━━━━┛││←┃海馬 ┃
 │  └─→┃ 鼻  ┃→┃ 嗅覚野  ┃ │┗━━━━━┛└─────────┘│ ┗━━━┛
 │     ┗━━━━┛│┗━━━━━━┛ └──────────────────┘  │↑
 │           └┐     │ ┌┘       ↑↑ ↓↓       ││ 
 │            ↓     └─↓───────→┏━━━━┓←──┐  ││ 
 │          ┏━━━━┓┏━━━━━┓      ┃扁桃体 ┃   │  ││ 
 │          ┃ 小脳 ┃┃大脳基底核     └┐┗━━━━┛   │  ↓│ 
 │          ┗━━━━┛┃     ┃│思考のループ│  │ └──→┏━━━━┓ 
 │   行為のループ  │    ┗━━━━━┛└───┐    │  ┌──┃視床下部┃ 
 │   (無意識)   │   ┌─┘  ↓          ↓  │┌→┗━━━━┛ 
 │           ↓   ↓ ┏━━━━━━┓ ┏━━━━━━━┓ ││   ↑↓   
 │    ┏━━┓  ┏━━━━┓ ┃ 運動連合野┃→┃       ┃←┘│┏━━━━━┓ 
 環境←──┃筋肉┃← ┃運動野 ┃←┃  前運動野┃ ┃ 前頭前野  ┃──┘┃自律神経系┃ 
      ┃  ┃  ┃    ┃ ┃ ブローカ野┃←┃       ┃   ┃ 内分泌系┃ 
      ┗━━┛  ┗━━━━┛ ┗━━━━━━┛ ┗━━━━━━━┛   ┗━━━━━┛ 

 私が提唱する第一の理論が「多重ループ理論」である。 

 心を、情報のループ回路(再入力回路、閉回路)の束として解き明かすのである。
 心においては、情報こそが本質であり、物質は副次的なもので、原理的には物質を交換することさえできるものである。※もちろん、現代の技術では不可能。 

 人間には、脳を中心として図に描かれるようなループ回路の集合体があり、そしてそこに流れる情報こそが精神−心なのである。
 脳は、ある部分がある機能を持つのではなく、ある部分とある部分のループ回路が機能を持つのである。従って、ある部分の破壊損傷の影響は、そこへのルートを持つループのすべてに及んでしまい、特定することはできない。 

 心を構成するループ回路は主に7種類に分類できる。 

一時記憶
 記憶した後、数ヶ月で失われるもの。主に海馬と側頭葉とのループ。
意味記憶
 言葉の記憶。主に側頭葉内部におけるループ。
エピソード記憶
 出来事の記憶。主に扁桃体と側頭葉のループ。
ライミング効果
 意識しない情報による記憶。感覚連合野での配線変化。
運動性記憶
 運動技術の記憶。小脳や大脳基底核での配線変化。
ワーキングメモリ
 作業記憶ともいう。前頭葉と感覚連合野とのループ。
感情記憶
 感情そのもの。扁桃体から前頭葉での配線変化。 

 記憶回路には、脳の内部でループとなるものと、環境との相互作用でのみループとなるものがある。この脳の内部のループこそ意識であり、環境とのループが無意識である。
 意識は脳内部の循環するループ回路の束であるから、その中心軸を仮定することができる。これが個人である。空間における中心軸こそが個人を決定するといえる。 

 ワーキングメモリは、コンピュータのメモリーと機能が似ている。一時記憶はハードディスク、エピソード記憶は外部メディアといえるだろう。
 このワーキングメモリで行われる作業が思考である。