Q6.【エピソード記憶】とは何か?

エピソード記憶】大脳皮質の連鎖ループの記憶

 海馬の一時記憶は、その後、各連合野に移動し、半永久的な記憶になります。その半永久的な記憶は、エピソード記憶意味記憶に分類されます。
 エピソード記憶は、過去の出来事の記憶です。個人的な経験として意識的に思い出すことができるもので、思い出の記憶ともいえるでしょう。修学旅行の思い出、初恋の思い出などがエピソード記憶です。
 エピソード記憶は、扁桃体が関与しています。扁桃体は、海馬と似たはたらきもしています。ただ、海馬と異なるのは、感情を生むような情報にたいしてのみはたらくことです。扁桃体は海馬より覚える力は弱いのですが、一度覚えると海馬より強く残ります。もちろん、その場合でも海馬もはたらいており、それを扁桃体が補助しているのです。
 エピソード記憶は、個体認識のために発達した記憶と考えられます。人間は感情の思うままにふるまうと、集団生活が成り立ちません。エピソード記憶は、かつて感情的にふるまったときのことを思い出すことにより、行動を制御するのです。主に人間同士の関係を記憶するのです。
 そのため、エピソード記憶は匂いと直結しています。哺乳動物は匂いをつけることによりテリトリーを示し自分の存在をアピールしていましたが、その名残があるのです。
 たとえば、田舎の匂い──森や線香の匂いなどを嗅ぐと田舎の思い出がよみがえります。嗅覚野は直接、扁桃体につながっているのです。(図2)
 エピソード記憶は、感情に直結しているため、おもしろい現象があります。音楽を聞くとその音楽をよく聞いたころの思い出がよみがえるのです。若いころに聴いた懐かしい音楽は、青春の懐かしい思い出をよみがえらせるのです。