Q66.【憎しみ】とは何か?

A.【憎しみ】は愛の喪失についての怒り

 憎しみは、悲しみから状況による分岐をした感情です。
 かつての仇討ち、親のかたきには憎しみがあります。家族を殺されたものは、その犯人を憎みます。怒りを越える、極限的な激しさをもっています。憎しみは、復讐という行動を生み出します。憎しみはあらゆる感情の中で最も危険なものです。
 怒りと異なるのは、愛があって憎しみがあること、怒りは威嚇であって攻撃ではないのにたいし、憎しみは攻撃であって威嚇ではないということです。
 憎しみは、愛の対象を喪失した時に、その原因にたいして抱く感情です。基本的には人間への感情ですが、対象を擬人化することにより他の生き物や自然現象に向かうこともあります。地震で自分の子供が死亡すれば、地震を憎むことも可能です。
 異なる宗教の信者には憎しみの素地があります。宗教の神とは、愛──無償の利他的行為を献上する存在です。多くの宗教は異教の神を否定しています。否定とは、愛の対象にたいする攻撃に等しいので、他の宗教の信者を憎むことになりやすいのです。
 愛には家族や共同体を維持させる力があります。それを破壊に導くような行動への罰則として憎しみが発達したのです。他人の愛を尊重しないものを罰するのです。
 しかし、実際の憎しみの行動は法律が代行することになっており、法律違反となります。現代社会では、憎しみの効果は法律によって万人に保証されるため、行動は押さえなければなりません。
 憎しみは、人類特有かもしれません。雌のゴリラは、自分の子供を殺した雄をそのまま配偶者とすることがしばしばあります。チンパンジーには、戦争や子供殺しが記録されていますが、報復というのはありません。ゴリラやチンパンジーには憎しみはないのでしょう。