Q63.【悲しみ】とは何か?

A.【悲しみ】は愛の対象の喪失の宣言

 悲しみは、愛から喪失による分岐をした感情です。
 家族が亡くなったときや、別れて会えなくなるとき人は悲しみを感じます。愛の対象を失うことが悲しみです。自らが利他的行為を行う対象を失うと、悲しくなるのです。
 悲しみには特定の表情があります。眉の内側が上がり、斜めに目を狭め、口の両端を下げます。そして、泣きます。涙は悲しみの主要な表現です。強い悲しみならその場にうずくまってしまいます。全体に動きが緩慢にもなり、活動の停滞をともないます。
 泣くという行為は、自分一人では処理できないことが発生したとき仲間を呼び寄せるための信号で、悲しみ以外にも発生します。悲しみのときに泣くのは、愛の対象を喪失を周囲に伝え、新たな対象を必要としていることを宣言しているのです。
 活動の停滞させることには、自己の生活を再評価、反省させて、行動パターンの変化を促す作用があります。これは、よくないことがあったのだから、それを次から避けるためです。
 悲しみは不快なものです。そのため、悲しみを避けようと努力することになります。悲しみは愛の対象の喪失が原因ですので、愛の対象を失わないように努力するようになります。
 また、悲しみの中にいる人間は他人の感情によく共感するようになります。これは、新たな愛の対象を探すためです。
 ですから、悲しくて泣いている、ふられた異性にいい寄って口説くのは本能的に正しい判断です。そのために悲しんでいるともいえるのですから。ただし、遺伝的なパターンであって本人の意志ではありませんから、嫌われる可能性もかなりあります。
 悲しみを感じないと、泣かないから、その効果である仲間の援助が得られません。気丈ですが、近づきがたい印象を与えます。逆にすぐに悲しみを感じて泣くと、頼りなくうっとおしい人と思われてしまいます。
 人類に悲しみが発達したのは、同胞の援助が得られるからです。集団で行動し、共同で生活する動物は悲しむと考えられます。ただし、鳥類、爬虫類、魚類にはないと思われます。彼らがつがいの相手を失ったときに変わった行動が見られますが、それは戸惑っているだけで悲しんでいるのではないようです。