Q59.勇気とは何か?

A.勇気は愛と希望と恐怖の混成感情

 恐怖と対立するものが、勇気です。
 勇気とは恐怖を押さえて行動することで、恐怖に打ち勝つことです。恐怖に無関係な勇気はありません。恐怖をまったく感じなくなると勇気ではありません。恐怖を意識しつつ、恐怖の行動ではない判断をすることが勇気です。
 勇気が必要なのは、人類の文化の発展に従い、恐怖が適応的でない場面が多くなったためです。猟銃をもっている人間が熊に恐怖するだけではかえって危険でしょう。
 勇気には二種類あります。希望(自信)の勇気と愛の勇気です。勇気とは特定の感情ではなく、恐怖+希望、恐怖+愛のことです。
 曲芸師などが綱渡りするとき高さを怖がらないのは、成功への自信であり、希望の勇気です。
 溺れている子供を助けるため、親が川に跳び込む──これは愛の勇気です。
 恐怖の場面で、希望か愛が沸き上がり恐怖を上回ったとき、それを勇気と呼びます。愛も希望もなければ勇気をもつことはないでしょう。勇気の強さは、愛と希望の強さに比例するのです。
 ちょっと古い言葉ですが、『論語』に「仁者はすべて勇者であるが、勇者は必ずしも仁者ではない」というのがあります。人に対して本当に思いやりのある者はみな勇気を持って行動することができるが、勇気のある人間は必ずしも思いやりがあるわけではないということです。