Q28.因果関係とは何か?

A.事象の階層が等しい連鎖関係が因果関係

 何か事件があったり、興味深い現象があれば、それはなぜ起きたのか因果関係を追究します。ところがこの因果関係というものは意外と難しいものなのです。
 因果関係を想像するとき、積み上げられたブロックを想像してください。これは時空間のブロックです。すなわち時空間としての宇宙を示しています。ブロックは下から上へと時間が流れています。積み上げられたブロックのビル、下のブロックを外すと上が崩れます。これが因果関係です。
 因果関係を特定するとは、上のある一つのブロックを崩すのに必要な最小限のブロックを見つけることに相当します。
 小さすぎるブロックなら上は崩れません。原因として弱いということです。
 大きすぎるブロックだと、上はみんな崩れてしまいます。原因とするには大きすぎるのです。
 ある人が交通事故を起こした。それは人類が車を発明したからだ。車がなければ交通事故もない。車の発明が交通事故の原因である。
 この展開は何か変ですね。しかし、一つ一つの言葉はおかしくありません。車の発明はちょっとブロックが大きすぎるのです。この車の発明というブロックを外すとその人の交通事故というブロックも崩れますが、それ以外の車に関連する膨大な数のブロックも崩れてしまうからです。
 ある人が交通事故を起こした。それは宇宙がビッグバンにより始まったからだ。ビッグバンがなければ交通事故もない。ビッグバンが交通事故の原因である。
 ムチャクチャですね。時空間ブロックの一番底を全部吹っ飛ばしています。
 ある人が交通事故を起こした。それは運転手が前方不注意でブレーキを踏み遅れたからだ。注意していれば交通事故もない。運転手の不注意が交通事故の原因である。
 これは比較的納得しやすい答えです。
 ある人が交通事故を起こした。運転手には持病がありその病気による発作を起こしてブレーキを踏み遅れたからだ。病気がなければ交通事故もない。持病が交通事故の原因である。
 少し疑問を感じる答えです。病気の影響は他にもいろいろあるからです。発作が予測されるものなら、車を運転すべきではないと感じます。これはブロックの大きさが小さすぎるのです。
 因果関係では、原因と結果が同じ大きさのブロックを求めることが大切です。小さいブロックは原因にならないのです。
 これがホーリズム全体論)やゲシュタルトの考え方に対応しています。全体は部分に還元されないというものです。部分をすべて解明しても全体はわからないということです。医学などではよく、人体の部分を理解しても患者を治せなかったりします。患者は臓器の集合ではないからです。
 なぜ部分の集合だけで理解できないのでしょうか。
 それはその対象の構造が外部に開いており、内部にループする自己言及回路を持つためです。対象の外部から情報を常に吸収する存在、常に新しく変化し続ける存在なので、その内部だけで完結しないのです。
 天気予報は年々精度がよくなるものの、完全に正解できるようになりません。それはなぜか。
 日本のある場所の天気を予測するには、その場所以外の天気が関係します。そして、さらに宇宙からの影響というものもあります。地球の自転や公転、太陽の影響なども考えなくてはなりません。
 外に開かれた回路の影響を調べていくと、結局、宇宙全部がわからないとわからないという結論になってしまうのです。そのために医学や気象は確率的にしか判断できないのです。