Q101.宇宙とは何か?

A.宇宙とは時間を持つ物質によって織られた織物である

 ミクロの世界の不思議はこれだけではありません。アインシュタインが提議した有名なパラドックスにEPR効果があります。
 光子にはスピンという要素があります。これは一種の回転なのでスピンと呼びます。
 1つの光源から、2つの光子が正反対の方向に放たれます。このとき、光子の持つスピンはもう1つの側と組になっています。1つがaならもう1つはb、あるいは逆だったりします。二つの組み合わせが決まっているのです。
 この2つの光子が発射された後に十分遠くに離れたところで、その片方のスピンを計測します。それがaと判明すれば、自動的にもう片方はbと判明します。
 問題なのは、この光子の移動中はスピンは数値をもっておらず、計測することではじめてスピンが決定されるということです。
 そうすると、ある片方のスピンを計測することで、もう1つの光子のスピンが決定されることになります。すなわち、片方を計測するとその情報がもう1つに一瞬にして伝わることになってしまうわけです。正反対方向への光ですから、原理的には地球から遠く離れた二カ所で実験しても情報が瞬時に伝わることになります。アインシュタインはこれを、光速度を超えることを禁止している相対性理論に矛盾しておりおかしいと考えました。
 この実験は後に実際に行われ、アインシュタインは間違っており、確かに計測する瞬間に数値が決定されることが確認されました。
 これはそもそも2つの光子が放たれたと考えること自体が誤りなのです。光子2つというのも、実際には計測されたときに確認されているに過ぎません。一つの光源からある一定の光が広がって伝播したというだけなのです。光の粒子性は、波と波が相互作用した瞬間がそう観測されるだけなのです。
 たとえそれが地球から何光年も離れたところで計測したものでも、その二つの光子は一つの波のままであり、一つの存在であるわけです。
 光が動く、光速度で動くという場合、電磁場の波の伝播であって、ピッチャーが投げたボールが動くとかいうのとは、全く意味の異なるものです。
 光=電磁波は動かない。光速度とは波の伝播速度であり、いわゆる物質の動く速度とはまったく別物で、光子の伝播は、水面の波と同じで何かが到達点まで動いているわけではないのです。
 対して私たちがふつう考える物質の動く速度とは、波の作用点の断続的な変化のことです。モノが動くときなめらかに連続的に動いていると感じますが、実はコマ送りなのです。それは波の結果として生まれるものですから、波そのものの伝播速度を超えることはできず、光速度が物質の速度の限界となります。
 光子と光速度にはさまざまな不思議な特徴があります。
 相対性理論によると光速度で動くと時間は流れません。すなわち光自身には時間がないのです。光には寿命がないのもそのためです。
 EPR効果のとき、どれほど遠距離を移動していても、光自身は時間が流れていません。波の伝達には時間が流れていないのです。すると時間はどこで流れているのか。波の作用点である物質の部分にこそ時間が活動するのかもしれません。
 物理学の法則には時間の前後に対称であることが知られています。素粒子は時間を逆行してもかまわないのです。反粒子は時間を逆行する粒子とも定義されます。
 素粒子にはアイデンティティーがないとされます。ある場所にある光子一つや電子一つは、他の場所にある光子一つや電子一つと全く同じもので区別することはできないのです。このことは宇宙に存在するすべての光子や電子は、それぞれが一つの巨大な海であることを示唆しています。宇宙には光子の海、電子の海が広がっているのです。
 エネルギーを得るとは、存在分布が広くなるということーー波の広がりが大きくなることに対応します。光子は質量はありませんがエネルギーを持っています。そしてE=mc2の方程式で表されるように、エネルギーと質量は交換可能なものです。
 質量があるとは、位置が固定されていることです。質量のあるもの、簡単にいうと重いものは運ぶのが大変ということです。ある場所に偏在しているということです。逆にいうと、質量のない光子はすべての場所に存在するわけです。
 光子は電磁波であり、ある周波数で振動しているのですが、その振動は進行方向と垂直に振動し、進行方向へは振動しません。進行方向へ振動すると光速度を越えてしまいます。また光は制止することができません。これは光子の移動そのものが振動、すなわち波というべきであることを示唆しています。
 宇宙を想像します。その宇宙を構成するのは光子が一粒です。
 一粒ですから、動きには意味がありません。そのため空間というべきものもありません。物の位置は相対的なものだからです。しかし、ここには既に時間があります。それは光子ですから波長を持っているためです。波長は時間なしに定義できない。時間は空間がなくとも成立することがわかります。
 超ひも理論では、様々な物質の違いはひもの振動数の違いとして表現されます。量子論では物質とは場であるとも表現されます。
 EPR効果は、空間や距離という考えに衝撃を与えます。空間の中をモノが動くという認識に問題があるのです。これは宇宙には空間はなく、時間と物質で構成されるというべきなのかもしれません。空間は時間と物質に還元されるということです。モノが移動する空間という概念は誤りなのです。時間を含んだ各種の物質という糸で縫い合わされた織物、それが宇宙なのです。