Q90.心には種類があるか?

A.心の位相幾何学・心は循環構造で4段階に飛躍発展する

 心を物質の動き――情報であると考える。すると、宇宙空間には物質がたくさん動いていますから、宇宙のありとあらゆる物質に心があると考えることになります。宇宙の物事にはすべて連続性があり、飛躍というものがありません。すると、そもそも私たちや動物たち、あるいは植物や無機物との違いがわからなくなります。
 しかし、物事に本質的な差異のある飛躍をもたらす体系があります。それが数学のトポロジー位相幾何学です。
 一本のひもがあります。この両端を近づけてくっつける。すると、一本の線分から円へと飛躍が起こります。このとき、連続性というものがありません。線分と円の中間の存在というのはないのです。くっついた瞬間に突如、線分から円へと飛躍するのです。
 無機物から生物、生物から動物、動物から人類、この違いは、情報がどのように動いているか回路として見ると、トポロジーの違いであることがわかります。
 無機物は、情報のやりとりの型がありません。すなわち、・の形、点です。
 植物などは、環境から信号を受け取って返すだけなので、Uの形、線分です。
 動物は、環境から信号を受け取り、それによって環境にアプローチし、その変化に応じてさらに行動するので、Oの形、円です。
 人間などは、頭の中でシミュレーションするループを持つので、8の形です。
 すなわち、心――精神には4つの分類があるわけです。
 宇宙には、多様な構造物やシステムがあります。なかには、意志があるのではと感じさせるものもたくさんあります。そこで、心という言葉の意味を、「物質構造に依存せずに一定パターンの行動を生み出す何か」と考えると、いろいろな存在に心を考えることができます。これらを、トポロジーという観点から考察してみましょう。
 物質の分子構造、コンピュータ、銀河、台風、竜巻のような渦構造、サーモスタット、人間の構成する国家、アリのコロニー、文化、生物の遺伝子進化、免疫システム、地球ガイアシステムなどにおける情報循環構造を考えるのです。
 物質の分子構造は、変化がありません。変化の伝達という要素がないので、やはり無機物で・点となります。
 現在のコンピュータの情報の流れにはループがありません。コンピュータに入力するのは人間であり、出力を受け取るのも人間です。コンピュータの情報のループは人間のループの一部です。コンピュータは手や足と同じで人間の一部なのです。植物同様、環境から信号を受け取って返すだけなので、Uの形、線分です。
 銀河、台風、竜巻のような渦構造は循環はあるのですが、受け取った変化を返すとき、既に対象が変化していて別になっています。物質は循環していても、情報は循環せず流れ去るだけなのです。すなわち植物と同じくUの形、線分です。
 アリのコロニーは、アリ個体=ニューロンや細胞という類比から指摘されたものです。コロニー維持のため情報を受け、情報を返すという循環があるように見えます。また、人間の構成する国家、文化にも情報の循環があります。しかし、これらの情報循環はサイクルが大きいため、入力と出力との時間差が大きく、対応しようとした環境はもう既に変化してしまっています。すなわち、情報は循環しておらず断絶することがあります。すなわちUの形、線分です。
 線分と円の違いを生むのは、情報循環のサイクルの大きさと環境変化の速度の対応です。環境変化に対して、情報循環のサイクルが遅すぎるものは、円となることができないのです。ひもの片側をもう片側に近づけようとしたら、片側が動いていてくっつけられなかったわけです。
 ロボット技術の研究では、0.1秒がクローズドループの限界と言われています。入力から出力までに0.1秒以上かかると、情報循環構造が安定しないわけです。
 この意味では、サーモスタットは環境に応じて変化しその変化で環境を変化させることができ、情報の循環構造が成立しています。サーモスタットは超原始的な動物というべきであり、Oの形、円です。
 免疫システムは、システムのサイクルは0.1秒より遅いのですが、体内という急激には変化しない環境を相手にすることで、情報循環構造を維持しています。Oの形、円です。
 生物の遺伝子進化は環境に対して変化するのですが、サイクルが非常に遅く、循環は成立しません。Uの形、線分です。
 地球ガイアシステムとは、地球には意志のようなものがあって、地球環境を安定させるようにはたらいているという考え方です。もしその仮説通り、地球を安定化させる力があるとすれば、Oの形、円です。しかしおそらく事実ではなく、そもそもシステムとして成立していないと思われます。