Q82.後天的な性格とは何か

A.葛藤の対処方法こそが後天的性格

 生まれもっての気質はあまり変化しませんが、その調整能力は大きく変化します。複数の感情が対立し、心の中で葛藤が起こったとき、それをどのように処理するかが異なるのです。この葛藤への対処方法は4つの気質と並ぶ重要な性格の要素です。性格心理学のビッグ5の一つ、統制性に対応しています。
 葛藤の処理の方法は遺伝的な要素はなく、経験によって発達します。どのような方法によって葛藤ーー同時に沸き上がった複数の感情に対処するかにはさまざまな方法があります。これは精神分析で扱われているテーマでもあります。
 精神分析では、抑圧、同一化、合理化などさまざまな対処法があることが指摘されています。人はこうした技法の一つもしくは複数を使って人生の困難を切り抜けます。これが他人から性格の違いとして映ります。

 抑圧(repression):無視して忘れることです。できるだけそのことがなかったこととして、無視して、考えずに済ませるのです。
 同一化(identification):偉い人に同化して忘れることです。たとえばスポーツ選手を応援したりすることで、その選手の気持ちになりきり、その感情によって今の感情を追い払うのです。歴史小説を読んでその英雄に気持ちになったりする方法です。
 合理化(rationalzation):屁理屈で正当化する方法です。酸っぱい葡萄の論理です。自分のできなかったことについて、その悪い部分やつまらない部分を思い浮かべて、できなかったことが惜しくないと考えるのです。
 投射(projection):自分の感情を他人に押しつける方法です。自分の悪意を他人に読みとり、自分の感情でなく他人の感情にしてしまいます。
 代償(substitution):獲得しやすい目標で済ませます。
 昇華(sublimation):そのエネルギーを別の方向へと向けます。
 逃避(escape):空想でごまかします。
 反動形成(reaction formation):欲求と逆の傾向を示し爆発を防止します。
 補償(compensation):望ましい特性を強調することで弱点をカバーします。
 退行(regression):感情をそのままぶつける幼児的な方法です。あまりに恵まれた家庭環境で育つとこの方法しか持たずに大人になることもあり得ます。