Q18.語の意味はどのように決められているか?
A.語の意味は身体行為を基準とした系統分類
かつてクジラは魚だとされていました。あるいはコウモリは鳥だとされていました。その見た目から分類すると、魚や鳥に思われるわけです。
もちろん、見た目といっても形だけではありません。模型の鳥や魚は鳥ではありません。行為が基準になっています。動かないものに対しては、言葉を使う人間の行為のみが基準となりますが、動物の場合は、その動物の行為自体も分類基準となります。人類にはミラーニューロンという、自己の行為と、その行為と同じものを見たときに共通に反応する細胞があります。行為することと行為を観察することを同じとして理解できるのです。
魚という分類は、その魚の全身を使った泳ぎ方という行為によって分類されています。鳥もまたその羽ばたき方という行為により分類されています。そのため、滑降するだけのムササビは鳥と見なされず、タコやクラゲは魚と見なされませんでした。
しかしその行為分類の結果、クジラは魚に、コウモリは鳥になってしまったわけです。
しかし、現在ではクジラもコウモリも哺乳類です。呼吸の仕方などさらに細かい行為の分類を導入した結果です。これはその進化の歴史をたどり、一つの共通先祖から進化した生物を一つのまとまりと考えて分類することでもあります。
この二つの考え方、行為を基準にすること、共通先祖を考えること、これは単語の意味を考えるにも有効な方法です。
単語の共通先祖とは何か?
それは、意味の完結した文章のことです。単語とは、完全意味文から取り出された断片ですから、それを復元することで意味を特定できるのです。
失語症の研究により、脳には独特のカテゴリーがあることが知られています。文字、身体部位、家屋部位、屋内物品、色、道具、生物、動作、数詞、動物、果実、野菜などのカテゴリーがあり、そのカテゴリーの言葉だけを失う失語症があるのです。
一見、どういう分類なのか無規則にすら思えます。しかしそれは、私たちが名詞基準の見た目の分類を見ているためです。意味の完全性という観点から考えると、これらはすべて行為の類似性で分類されていることがわかります。
文字:書く
身体部位:直接動かす
家屋部位:そこへ自分が行く
屋内物品:置く
色:見分ける
道具:手で動かす
生物:見守る
動作:動く
数詞:数える
動物:捕まえる
果実:直接食べる
野菜:調理する
行為というのは身体的なものです。言葉の基礎的な分類は身体が基準になっているといえるでしょう。また、こうした分類になっているのは身体への運動信号を送る脳の運動野が、身体部位ごとに分かれているためでしょう。