Q16.語の意味とはどんなものか?
A.意味の完全性−不完全性スペクトルがある
言葉を構成する要素に単語があります。言語を行動調整作用と考えたとき、単語の品詞によってその力が違うことがわかります。
たとえば、「逃げろ!」という言葉は相手の行動を強く変化させますが、「逃避」ではよくわかりません。動詞は単独で言語として機能することがあるのに対し、名詞には言語として機能しないわけです。名詞では行為が生まれない、すなわち、名詞そのものには意味がほとんどないということです。これは、動詞は単独でも文を構成することができるが、名詞は単独では文たり得ないということでもあります。
言語はその起源的には、他の個体を操作する信号です。ですからこれを最も理解しやすい方法は命令形を考えることです。
文法を考えるとき、文の完結性の問題があります。命令形の文の場合、自動詞は動詞単独で文を構成できますが、他動詞なら目的語と動詞で構成されます。もし他動詞に目的語が欠けていると、意味のはっきりしない文となります。
「走れ!」「 Run!」
これは走るのだなと理解できます。
「投げろ!」「 Throw!」
投げろって、何を? と困惑させられてしまいます。すなわち、意味が不完全なのです。もちろん、
「石を!」「 Stone!」
でも困ってしまいます。石をどうしろっての? というわけです。やはり、
「石を投げろ!」「 Throw a stone!」
と、言ってもらわないと困るわけです。
これで名詞が意味を持たない理由がわかるでしょう。名詞は完全な意味を持つ文の破片であり、一部分にすぎないのです。意味を構成する要素の一部なのです。そのため、名詞は意味が不完全なのです。
どのような文が完全な意味を持つか考えますと、
自動詞
目的語名詞+他動詞
副詞+自動詞
目的語名詞+副詞+他動詞
形容詞+目的語名詞+他動詞
形容詞+目的語名詞副詞+他動詞
‥‥‥
もちろん、これはいくらでも長くすることができます。