Q15.思考とは何か?

A.思考は未来の自分への命令

 そもそも人間はなぜ言語を話すのでしょうか。動物にも言語に似たものはあります。いろいろな信号を出して仲間に感情を伝達したり、情報を伝達したりしています。また、チンパンジー、イルカ、オウム、ボノボなど知能の高い動物には、人間の言語に近いものが習得できる可能性が指摘されています。
 進化の歴史では、淘汰により生存に有利な能力が発達します。言語もまたその生物にとって有利であったから生まれたわけです。では言語の利点とは何でしょうか。
 それは、言語を使うことにより他の同胞の個体を操作し行動を変えることができるということです。何か指示を出したりお願いしたりすることで、仲間の個体はそれに応じて行動してくれます。それまでの動物たちの鳴き声やディスプレイよりもはるかに精密に行動を調整することができます。これにより効率的な集団行動することができるから有利なわけです。
 言語による行動調整作用は、他個体だけとは限りません。自分自身にすら向けられます。それが独り言です。あるいは、計算するときに数字を読み上げたりすることです。言語を使うことで、未来の自分の行動を変えているのです。
 そして、独り言として未来の自分の行動を調整するためなら、実際に発音する必要はありません。思考の言語として内語となるわけです。思考は未来の自分への命令であるということができます。