Q13.言葉の意味とは何か?

A.意味とは行為のこと

 脳では、言葉はフレーズの大きさではたらいています。では、フレーズの中にある単語とは何でしょうか。単語の持つ意味とは何なのか考えてみましょう。
 言葉の意味と言われると、どんなことを答えるでしょうか。一般的には、「猫」の意味は何かと問われれば、実物の猫を指さして見せたりするでしょう。すなわち、実際に存在する物体を指して見せるわけです。
 しかし、これだと答えられないものはたくさんあります。たとえば、「愛」の意味と問われて何かを指さす人はいないでしょう。指し示す対象は意味ではないのです。
 対象は意味ではない。これは大事な区別です。
 では意味とは何でしょうか。これは、「意味」という言葉をどのように使っているか考えるとすぐにわかります。たとえば、
「そんなことをして何の意味があるのか?」
 と、聞かれた場合、そのことをした後にどんなことができるか述べるでしょう。
「英語を勉強することに何の意味があるのか?」
 と、聞かれれば、
「外国人と会話することができる。世界中の人々と知り合いになれる」
 などとそこから生まれる行為を答えます。意味=行為なのです。
 それにたいし、
「俺はバカだから、英語なんて習得できない。英語の勉強なんて無意味だ」
 と、答えるかもしれません。この人にとっては、何ら行為が生み出されない、すなわち、意味が生まれないので無意味なわけです。すなわち、「英語の勉強」ということでも、意味は一人一人違うわけです。
 しかし、この人に「英語の勉強」の意味を問えば、「単語や文法を暗記すること」と答えることができるでしょう。すなわち、「英語の勉強」の意味は知っているわけです。
 この場合の「単語や文法を暗記すること」はこの人から見た「英語の勉強」の普遍的な意味であり、無意味というのは個人的な意味なわけです。
 しかし、では「猫」の意味とは何でしょうか。「猫」という生き物そのものは意味ではなく対象です。「猫」の意味とは、猫に関連したときに生まれる行為のことです。撫でたり飼ったりするのが意味なのです。もしも、猫でも犬でもどんなペットでも同じように接する人がいたなら、その人にとっては猫や犬という言葉には特別な意味はありません。「ペット」の意味しかないわけです。
 この人に猫のすばらしさを訴えても通じないでしょう。すなわち、この人には猫特有の意味は通じないわけです。意味は一人一人が生み出す行為であり、それは一人一人違っていて共通する部分もあるが共通しない部分もあることがわかります。