Q12.思考の最小単位は何か?
A.フレーズが思考の最小単位に対応する
5つのフレーズの内の、述語、主題、句説明の3つのフレーズの組み合わせにより、構文のパターンが決まります。残りの語説明、文説明のフレーズがありますが、これはこの4文型のバリエーションとして考えます。フレーズの切れ目に / を入れた文で考えてみましょう。
1.述語文
鳥が飛ぶ。
A bird flies.
2.主題−述語文
象は / 鼻が長い。
The elephant / has a long trunk.
3.句説−述語文
東京で / 買い物をした。
3e.述語−句説文(英語)
I did some shopping / in Tokyo.
4.主題−句説−述語文
山田は / 大学で / 心理学を専攻した。
4e.主題−述語−句説文(英語)
Mr.Yamada / majored in psychology / at the university.
この四文型は日本語、韓国語、中国語に共通ですが、英語では句説明フレーズの配置が違うため3e.4e.のようになります。また、英語の代名詞は強く発音しない限り主題になりません。
ここに語説明フレーズや文説明フレーズが追加されることがあります。
語説明フレーズは、ある単語を詳しく説明したい場合に使われます。日本語と韓国語の場合は説明する言葉の直前に、英語の場合は直後に、中国語では基本的に前に置きますが後ろに置くケースもあります。
文説明フレーズは、言葉の流れを良くするために文と文のつなぎとして使われます。日本語では文末か文頭に、英語と中国語では文頭に置かれます。
英語の文説明フレーズには、全く同形のままその句説明フレーズとしても使えるものがあり、その場合はコンマで区切って使用します。
英語の代名詞は単独ではフレーズを構成しない
英語のフレーズ構成で、日本人に理解しにくいのが代名詞と主題フレーズの使われ方です。英語は、文の中の位置で言葉の意味関係を決める言葉なので、そこに置く言葉がない場合も、何かを置いて穴埋めしないと文になりません。そのときに代名詞や副詞などが使われるのですが、この穴埋め用法の代名詞はほとんど意味を持たないため、フレーズを形成しません。
There is a cup / on the desk.
述語 句説
机の上に / コップがある。
句説 述語
これは主題のない文です。英語でも日本語でも主題はありません。ただ、日本語では状況が先に提示されます。ふと、机の方を見たらコップがあるのに気がついたわけです。意図的に発話されたものではなく、その情報により引き起こされた言葉の多くには主題フレーズがありません。
The cup / is on the desk.
主題 述語
コップは / 机の上にある。
主題 述語
こちらには主題フレーズがあります。誰かがコップを探していたので、コップについて述べたのです。話者はまさにコップについて話したかったので、主題としてコップが提示されているのです。
ただし、代名詞で混乱を招きやすいことは、声を強くすることで主題化するという方法があることです。
He is a student.
述語
学生だよ。
述語
He / is the criminal.
主題 述語
彼が / 犯人だ。
主題 述語
この強声による代名詞の主題化と同じ現象が、日本語の強声による“が”の主題化です。日本語では、主題フレーズを作る方法として、“は”を使う方法と強声の方法があり、英語では代名詞の強声と、それ以外を主語におく方法があります。
このとき、強くいうだけでなく、その直後に間があるのが特徴です。代名詞+助動詞やbe動詞の短縮形があるのは、主題化のための間との対比をつけるためでもあります。英語の代名詞には、指示用法と穴埋め用法があるわけです。
英語話者といえど、I love you.(愛してるよ)というとき、I, Love, You, の3項目を意識しているわけではありません。日本語話者も英語話者も「愛してる」という一つの思考単位なのです。しばしば、日本語は主語がない曖昧で論理的でない言語と言われますが、むしろ英語の方が実際の思考内容と対応しない冗長な言語なのです。
フレーズは思考を示す
フレーズというのは、話者がどんな思考をしたかを示しおり、文そのものによって決定されるわけではありません。
Equality / is guaranteed by the Constitution.
平等は / 憲法で保証されている
これは標準的な分割パターンです。しかし、平等は何によって保証されているか、との質問に答える場合なら、
Equality is guaranteed / by the Constitution.
となりますし、平等というのは何か根拠があるか、との質問に答えるなら、
Equality is / guaranteed by the Constitution.
となるでしょう。
また、言語は上達することで、複数のフレーズを1つにまとめて認識するようになります。
ことわざの「一石二鳥」
to kill two birds with one stone
は、その内部を見ると、to kill two birds / with one stone ですが、実際には1フレーズとして認識し発音します。すなわち「効率良く」という感じに使うと1フレーズですし、「1つの石で2羽の鳥を殺す」なら2フレーズなのです。こうした感じで、もともと複数のフレーズだったものが1フレーズにまとめられることがあります。
一見、フレーズ分割というのは、恣意的であるように見えるかもしれません。しかし、それは話し手にとって恣意的なのであり、既に発話されたなら、それは恣意的ではなくなります。聞き手にとって恣意性はまったくありません。