Q55.【恐怖】とは何か?

A.危険から身を守る反応が【恐怖】

 5番目の基本感情が恐怖です。
 恐怖は興味から状況による分岐をした感情です。怖いものはすべて興味の対象なのです。そのため、ライオンやチーターを草食動物がつかず離れずにいたり、チンパンジーやヒヒが大きなニシキヘビを見つけて取り囲んだりすることがあります。
 人は、高い場所や不安定な場所、たとえば吊り橋を渡るときや、凶暴な動物の前や、暴走するトラックの前にいれば恐怖します。あるいは、ヘビのようにくねくねと動くヒモ状の物を見ると、恐怖します。
 その場所で起こる苦痛が想像させられる場合に恐怖するといえます。そのため、怪談話でも対象がその場にあるように語られます。その場ですぐ反応すべきと感じなければならないのです。
 恐怖を生むものには共通点がありません。一つ一つが自然淘汰で選択的に発達したと考えられます。すなわち、恐怖の遺伝子は一つではないということです。
 高層マンションに育った子供は、高い所を怖がらないことがあります。恐怖も学習される必要があるのです。あらゆる感情同様に、遺伝なのは基礎だけなのです。
 恐怖には独特の表情があります。眉を上げ、額の中央に深いしわをつくり、目を大きく見開き、上のまぶたを引き上げ、白目が大きく、口は少し開いてまっすぐ後ろにひきます。これらは服従の信号です。相手が人間の場合、攻撃を鈍らせる効果があることが確かめられています。
 恐怖の行動は、泣く場合もあれば、走って逃げ出すこともあります。可能ならば逃走し、できなければ悲鳴をあげ泣き叫び、小さくうずくまります。逃走、救援、防衛、パニックなどが恐怖では用いられるのです。
 こうした恐怖の行動により、危険を避けて生存することができます。